<短編エッセイ>
 サイエンスファンタジー・時間とは

  時は100年前、デンマークの理論物理学者ニールス・ボーア曰く、(自然界は)「相反するものや排他的なものが互いに補い合って成り立っている」(相補性)。現代の量子力学の本質を暗示しているように思える。
  200年前イギリスの物理学者・化学者マイケル・ファラディー&ハインリッヒレンツの法則ε∝-dΦ/dt(回路に発生する起電力εは磁束Φの変化に比例し(ファラディーの法則)その時発生する起電力の向きは磁束の変化を打ち消す方向に発生する(レンツの法則)。右辺の磁界変化に要したエネルギーと、左辺の発生したエネルギーは等しい(ヘルムホルツ定式化、エネルギー保存則)。ここであえて比例微分方程式を取り上げた理由は右辺の-記号に意味があるからである。数学的に導かれた記号でなく、物理的公理としての反作用(逆起電力)を意味する。反作用の恩恵で私達は快適な生活を送ることができる。電磁気の逆起電力の発生理由は意味深である。アインシュタインは常時机上にファラディーの写真を添えられたということからもファラディーの偉大さが忍ばれる。
  大灯国師宗峰妙超(鎌倉時代の臨済宗の僧侶、大徳寺開山)曰く、「億却相別れて須臾も離れず、尽日相対して刹那も対せず」(長い間別れていても少しも離れていない。一日向き合っているのに一瞬たりとも向き合っていない)。存在と無とは表裏一体、いわゆる(双子の電子)の振る舞いを連想してしまう。
  インド仏教刹那滅論曰く「すべてのものは刹那ごとに生成し瞬間ごとに滅する」とある。宗教、哲学上の解釈は複数存在し真の教義は不明であるが、真空中の量子の姿を連想する。なぜか晩年のボーアは東洋思想に傾倒したそうである。天才の想像力は奥深い。
  さて本稿は時間の本質についての思考実験である。雲をつかむような命題に筆がさっぱり進まずそこで思いついたのが先人達の思想を顧みることからはじめた。
  無意識のもと過ぎてゆく時間とはいったい何ぞや? ただ思い浮かぶことといえば秒針が刻む姿を思い浮かぶ程度だ。時間の1秒の長さは「セシウム原子の絶対零度K(-273度c)時の振動数」を基準に定められている。実は、上記文脈中に時間の子孫が脈々と存在しているのである!では時間のルーツをたどってみよう。宇宙は「無」から生まれた(無の世界でなく無=nothing)。時間、空間、エネルギー、重力が皆無である。もしも無が永久に継続すれば宇宙、人類は存在していないはずだ。自然は変化を好まない(慣性)。同時に現状から乖離(反作用)しようとする二律背反の特性がある(相補関係)。両特性が絡み合い次のような独特な環境が出現するのである。(無)に反発して(無)を脱出しようとする (未知の時間素子X)は直ちに(無)に連れ戻され消滅する。だがまれに脱出に成功した(X)に続いてなだれ現象が発生し(無)は消滅し(X)のみとなり初めて「時間」が宇宙に出現したのである!この(X)が時間と称する物の正体そのものである。下図X1~Xnの温度は絶対零度であり、時間のみ存在する。だがこれから先きr1~rnは自己反発(反作用)を正負交互に繰り返し高温高圧のもと正負混在して拡散する。その過程で素粒子やセシウム44のような原子が生成されてゆくのである(s1~sN)。なお、X1~Xnの時間素粒子の振動、位相はすべて同位相(絶対零度下のXの位相は同位相)だがX2~r1~r2~r3~rn以下の素粒子、原子の位相は異なる。
 以上を要約すると、無から未知の時間素子が生まれ、未知の時間素子からエネルギー量子が生まれる。反作用でエネルギー量子は交互に正負のエネルギーに振り分けられながら高温高圧環境のなか各種素粒子や光やセシウム原子44のような原子が生成されてゆく。図1を参照されたい。一般に波(振動)と呼ばれているものの正体はr1~rn、s1~snの質点粒子の移動を意味し、波であり、粒子であると言われる理由である。
                                                                   令和6年2月 朽津卓世 

 
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